概要
前回に引き続き、マネージャーとしての働きに合わせて、チームでの働きについての知識をつけようということで読み始めました。
学んだ事をまとめておこうと思います。
読んだ感想としては、チーム、いわゆる組織の生産性を上げるためにはチーム一人一人のモチベーションを上げることを題した、モチベーションエンジニアリングが必要という言葉は
エンジニアリング組織論への招待でもあった
「エンジニアリング = 不確実性の解消」
にも繋がる言葉になると思います。
チームの生産性という不確実なものに対してのアプローチとしてのエンジニアリングとなります。
「偉大なチームには、偉大なリーダーがいる」
のではなく、
「偉大なチームには、法則がある」
という言葉の通り、法則によって生産性を上げていくアプローチが記述されています。
チームとは
2人以上の集団のことをグループという。
グループに共通の目的を作ることで「チーム」と呼びます。
この共通の目的を目標とし、**全員が同じ方向を向くこと**が条件となります。
目標を適切に設定することが良いチームになります。
AIM
チームのパフォーマンスのための
活動意義・成果・行動・目標の繋がりなどの役割について
目標の設定
3つの目標を用意し、チームメンバーという立場から見て、
それぞれの役割のメリットを理解する必要があります。
- 行動目標: 具体的な行動から影響を与えるが、影響力は低い
- 成果目標: 行動目標を達成した時に得られるもの、影響力はより大きくなる
- 意義目標: 最終的に達成される目標、ここでは具体的な行動までは落とし込めていないが影響力は高い
ここでの例は、少しスケール的には小さいものですが
- 意義目標に「エンジニア同士の交流を深めていきたい」と定義します。
- 成果目標に「交流するイベントを開催する」と定義します。
- 行動目標に「イベントの内容や段取りを考える」と定義します。
最終的に、エンジニア同士の交流は、イベントを通して達成されることになります。
このように、それぞれが持つ役割とメリットを理解しておくことで、メンバーが実際に行う時の指標となります。
これら目標の一つだけしか頭にないと、メンバーから出てくる意見に偏りが発生する。
これがビジネスの世界になると、行動目標のみに囚われることにより、
後述する「チーム全体の雰囲気」へ影響を及ぼし負の循環に繋がる可能性が高くになります。
変化のスピード
特に昨今のビジネスの変化スピードにより、これまで良かったと思われていた方法がベストでなくなるという事も早くなります。
そうなった時に、行動目標のみ想定していたら、柔軟な変更に対応できなく、変更に対して大きな振れ幅が発生します。
意義目標がしっかり定められていれば、取るべき行動への柔軟な変化を可能にします。
個人の責任により、意義目標を定めることができるようにすることで、このスピードの変化に対応できるようになります。
これには、個人が自発的に行動するチームが必須ということになります。
BOARDING
チームにおいて人員は非常に重要なファクタになります。
そのための人員選定について
4つのタイプ
チームのタイプは4つに分かれますが、
分類するために2つの軸があります。
- 環境の連携度合い: 高いと状況の変化に合わせて行動を変更する度合いが高まる。
- 人材の連携度合い: 高いと同じ時間に行動する度合い高まる
環(低) & 人(低) | 環(高) & 人(低) | 環(高) & 人(高) | 環(低) & 人(高) |
---|---|---|---|
メーカーの工場 | 生命保険の営業 | 飲食業の店舗スタッフ | スマホアプリの開発チーム |
といった分類分けができます。
人の入れ替わり
人の入れ替わりが多いチームは悪いかどうかについては、チームのタイプによります。
- 環境の変化が小さいチームでは、人の入れ替えは少ない方が良い
- 環境の変化が大きいチームでは、人の入れ替えがあった方が良い
チームの多様性
チームには多様なメンバーがいる方がいいについては、チームのタイプによります。
特に現代だと、新卒一括採用といった体系が少しずつなくなりつつあるため、
似たメンバーで揃えるといったことせず、変化の激しいビジネスシーンでは異なるメンバーを揃える流れがあります。
- 人材の連携度合いが小さいと、似たメンバーが揃っていた方が良い
- 人材の連携度合いが大きいと、異なるタイプのメンバーの方が良い
COMMUNICATION
コミュニケーションにおいて重要なことは
「ルール作り」です。
コミュニケーションのルールが高いとコストがかかり、また精緻すぎてもコストが高くなります。
その間の区間を見極めることが大事になります。
そして大事なこととして、**コミュニケーションは少ない方が良い**です。
- 人材の連携度が小さいチームは、ルールを細かくする必要はない
- 人材の連携度が大きいチームは、ルール化しないとコミュニケーションが大きくなりがち
では、ルールはどのように作った方がいいのでしょう。
ルール作り
ルールを増やすか、減らすか
環(低) & 人(低) | 環(高) & 人(低) | 環(高) & 人(高) | 環(低) & 人(高) |
---|---|---|---|
中間 | 少ない方が良い | 中間 | 多い方が良い |
誰が決めるか
環(低) & 人(低) | 環(高) & 人(低) | 環(高) & 人(高) | 環(低) & 人(高) |
---|---|---|---|
チームと話し合いながら | 自分で決める | 中間 | リーダーが決める |
どこまで責任を負うか
環(低) & 人(低) | 環(高) & 人(低) | 環(高) & 人(高) | 環(低) & 人(高) |
---|---|---|---|
個人成果に責任を負う | 中間 | チーム成果に責任を負う | 中間 |
何を評価するか
環(低) & 人(低) | 環(高) & 人(低) | 環(高) & 人(高) | 環(低) & 人(高) |
---|---|---|---|
中間 | 成果を評価 | 中間 | プロセスを評価 |
どれくらい確認するか
環(低) & 人(低) | 環(高) & 人(低) | 環(高) & 人(高) | 環(低) & 人(高) |
---|---|---|---|
確認が少ない | 中間 | 確認が多い | 中間 |
感情によってコミュニケーションが阻まれる
簡潔であればあるほど、内容に密度が生まれます。
そういったコミュニケーションは、無駄を省いた意思の伝達ができます。
しかし、これは無駄話をするなという意味ではなく、
意志の伝達に無駄な情報を含ませても意味がないという意味です。
無駄な情報を含ませた伝達をおこなったとしても、メンバーが動かないことはあります。感情によって、「自分なんかが」といったネガティブな感情により行動が制限されてしまうので、誰がどのタイミングで言ったかが重要になります。
無駄を含んでも大丈夫な場合
まずは理解に専念することです。
自分が理解されたと感じた人は、その人のことを理解しようとします。
そこで信頼関係が生まれます。
まず理解することを行うために、必要なのが無駄を含めて、その人の人となりを理解することに努めることです。
ここで、重要なワードは、チームメンバーの
- 経験
- 感覚
- 志向
- 能力
そして、そのメンバーの人生を知ることが近道になります。
何を頑張ってきたか、何を目的にしてきたかを理解することで
何かを頼む時の言葉に信憑性を持たせることができます。
例: 「〜さん、このタスクをお願いできますか。」ではなく、「〜さんは、過去にこういった経験があるから、このタスクをうまく回せそうな気がするので、お願いできますか」など
以下の指標などが
モチベーションタイプ
- アタックタイプ
- レシーブタイプ
- シンキングタイプ
- フィーリングタイプ
ポータブルスキル
- 対自分
- 外交的スキル
- 決断力
- 曖昧力
- 瞬発力
- 冒険力
- 内向的スキル
- 忍耐力
- 規律力
- 持続力
- 身長力
- 外交的スキル
- 対人力
- 父性的なスキル
- 主張力
- 説得力
- 統率力
- 母性的なスキル
- 傾聴力
- 受容力
- 支援力
- 協調力
- 父性的なスキル
- 対課題力
- 右脳的なスキル
- 試行力
- 変革力
- 発想力
- 左脳的なスキル
- 計画力
- 推進力
- 確動力
- 分析力
- 右脳的なスキル
昨今の状況
昔だと、新卒一括採用などの影響で、同じ考え、同じ思想を持つ人同士が被る事が多かったため、コミュニケーションは最小限で抑えられていた部分がありますが、
最近のビジネス傾向的に、いろんな人材を入れることで多様性を図り、その中で新しいアイディアを生み出していくという企業が増えてきているため
コミュニケーションというのが重要なファクタの一つになっている傾向があります。
そうした解決策の一つとして、1on1のような形式で、社員と話をすることが今後のビジネスにおいて、より重要なになっていくように思われます。
その中で心理的安全性*1といったものを担保していく必要があります。
DECISION
誰が意思決定をするかは、物事の行末を決めるのに大きな影響を与えます。
3つのタイプが存在し、それぞれが適切な形で決定権として使われるのが良いです。
- 独裁
- 多数決
- 合議
独裁はよくないのではないかという誤解
それぞれの決定権には、一長一短があるので「独裁は選択肢としてはあるが、実行するには良くない」といった先入観はない方がいいです。
それぞれの決定権によって、主に影響するのは
- メンバーの納得感の得やすさ
- 意思決定にかかる時間の長さ
に影響を与えます。
独裁は、意思決定者が1人になるため、意思決定にかかる時間は著しく短いです。
一方、合議に関しては、メンバーの意思決定が関与するため、納得度が高くなる傾向になりますが、その分時間もかかります。
このように、どのタイミングで誰が意思決定をするかというのを決めておかないと、要らぬところでストレスを抱えることになり、チームとして健全とは言えない状態になり得ます。
KT法
ケプナー・トリゴー・ラショナル・プロセス
という方法があります。
次のステップを踏まえる事により、納得感を得た状態で、スピーディに結論に至る事ができるというものです。
まず、意思決定には選択肢を提示するというところから始まりますが
この選択肢に対し、基準を設けます。
その基準に対し、優先順位をつけ、最後に優先基準が高く合致するものを選んでいくという方法になります。
いきなり、選択肢同士を比較から始めてしまうのは良くなく、まずは選択肢がなぜ選ばれて、今の問題に対する優先順位をつけ、それぞれを表に表すところが鍵となります。
明確な判断がすぐにつかない選択
明確に、100:0でメリデメがはっきりしている選択に対しては悩むことはありませんが、49:51などで揺れている選択肢に対してのアプローチとして
えいやっと決めてくれる意思決定者がいることの方が素早い結果を得られることになります。こういう問題にあったとき、30分かけて出た答えと、5秒で出した答えというのは86%が同じ答えらしいです。
なので、まず1%でも高い方を選び、少しでも実行時間をかけて精密に比較ができるようになった方が後々的には有意義ということになります。
51%しかなかったメリットを70, 80%と引き上げる実行に時間を使った方が良いでしょう。
こういった決断を独裁的に決めてしまうことはメリットになります。
影響力
決定には、誰が決定したかの影響力も大きく関係します。
重要な点は5つあります。
- 専門性
- 返報性
- 魅了性
- 厳格性
- 一貫性
ENGAGEMENT
どんな人でも(プロフェッショナルだとしても)、モチベーションに左右されることはあります。
そういった時に、チームとしてどういうものがあるか。
個人であれば、大変な仕事だけどその分給料が良いなどの動機などがモチベーションにダイレクトに影響するものだと思います。
この動機の高さやモチベーションによる貢献度のことをエンゲージメントと言います。
チームとしてのモチベーション
4つの概念があります。
- Philosophy(理念・方針)
- Profession(活動・成長)
- People(人材・風土)
- Privilege(待遇・特権)
活動自体に魅力があるものは、Professionに分類されます。
雰囲気や文化に魅力があれば、Philosophyに分類されます。
その文化の中で、気があう人などがいるとかであれば、Peopleに分類されます。
さらにその中で、自分にとって有意義な利権が得られそうであれば、Provilegeに分類されます。
自分がどこに魅力を感じるかを分析することは重要です。
何に注力すべきか
とは言っても、全てを魅力的にすることは企業としては不可能に近いです。
時間や人員などのリソースは有限だからです。
では、どうするべきか。
配分が重要になります。
一つの魅力に絞って、それに対して共感を得られるメンバーを募ることが重要になります。
求人などを見て、企業ごとにどこに注力しているかを見てみるのはいいかもしれないです。
その注力しているものがその会社の文化となり、自分がストレスなく働けるかにつながっていきます。
総エンゲージメントを高めるためには、広く高い人を集めるのではなく、一つの魅力に対して特化させた方が、高めやすいということになります。
エンゲージメントの方程式
エンゲージメント = 報酬・目標の魅力(やりたい) * 達成可能性(やれる) * 危機感(やるべき)
それぞれを
- will
- can
- must
と言い換えることができます。
willは、目標
canは、具体的行動
mustは、できなかった時のペナルティ
として捉えられます。
当事者意識
当事者意識が高められるチームが理想系になります。
「自分1人くらい…」という意識を無くすことになります。
どうするか。
ポイントは3つ
- 人数
単純に人数が多いと、自分1人くらいと思ってしまう割合が増えてしまう点 - 責任
責任の所在をハッキリさせる点 - 参画感
意思決定が自分の関係のないところで進んでいるなどにより、他人事のように感じてきてしまうという点
チームの雰囲気をマネジメントする
1人に意見が同調してしまうことや、みんなの意見に同調してしまうという現象により、ネガティブな雰囲気というのは広がりやすいです。
ポジティブな雰囲気をキープするには、二つのポイントがあります。
- スポットライト
- インフルエンサー
スポットライト - ポジティブな人に光を当てることで、その考えを持つ人がメジャーなチームという雰囲気を広める
インフルエンサー - チームの影響力が高いメンバーに働きかけ、転換させることで雰囲気をマネジメントする
まとめ
チームの方向性であったり、雰囲気というのは誰かがやるべきものというわけではなく、「メンバーそれぞれが持つべき意識」ということです。
もちろん、それぞれの責任、責務があるのでできることなどの制限などはありますし、制限は設ける必要のあるものです。
しかし、その中でもやはり自分とチームの相性であったり、これからチームをどうしていくかの心持ちによって雰囲気や方向性はいくらでも変わるものだと思います。
チームを強固なものにするのは、上司やリーダーだけでなく、メンバー全員にそういった権利はあるということを伝えたかったのではないかと思います。
人と一緒に働く、それ以外にも人と活動を行うというチーム戦全てに対して有効的な効果があると思うので、この本にあることを少しずつでも意識して実践していくというのは長い人生の中での良い資産になるのではないかと思いました。